脊髄損傷で足に麻痺がでていないのに腕に麻痺がでるケース
脊髄損傷で麻痺や不快感があらわれるのは、圧倒的に下肢、足の部分になります。
これは脊髄損傷が起こった個所が首に近い上になるほど、体の動きや神経に対応する脊髄神経の麻痺する箇所が多くなるためです。
尾てい骨に近い脊髄損傷ならば足先などに麻痺がおこりますが、首の脊髄損傷ならば首より下の全身まひとなるため、『足という部分の麻痺』という割合はずば抜けて多くなるのです。
しかし、脊髄損傷でも不完全脊髄損傷と言われる、脊髄が完全に断裂した物ではなく、一部が断裂・損傷しているという場合には、足に麻痺が出ていないが腕や指先など別の部分に麻痺が出ることもあります。
足の麻痺の場合歩行に支障が起こりますが、腕や指などに麻痺がおこった場合、日常生活の動作に影響が大きくあります。
「手がしびれてうまく物が持てない。」、「物はつかめるが繊細な作業が出来ず、箸が使えない。」、「手が震えるためテレビのリモコンのボタンを押せない。」と、日常生活の動作は手を使うことが多いため、交通事故前と比べて不便を感じる患者が多いです。
手のしびれでも脊髄損傷が原因かも?
しかし、手の麻痺が出ている場合に医師が真っ先に疑うのは、『腕の神経に異常があるのではないか?』ということです。
足に麻痺が出ずに腕に麻痺があるのならば、肩や腕の神経に異常があると考えるのは間違っていないのですが、不完全脊髄損傷、特にCTやMRIなどでも視認しにくい微細な物であれば、医師も脊髄損傷に気が付かず、「肩や腕の神経に異常はないのになぜ?」となったり、「患者も高齢なので、たまたま交通事故で老化による麻痺が顕著になっただけ。」と、別の事が原因とされてしまう事があります。
医師がCTやMRIの再検査をして脊髄損傷が見つかればよいのですが、腕のしびれや麻痺以外に顕著な症状が無い場合には、改めて検査をすることは少ないのが実情です。
そのため、後遺障害認定の際に、加害者側のみならず治療している担当医師とも対立してしまう事があります。
「交通事故の後から腕に麻痺が出て、腕の動きは悪いし、指もうまく動かせないのに、医師は年齢的なものだから仕方ないと、後遺障害の診断書を書いてくれない。」など、実際に後遺症があるにもかかわらず医師が積極的に認めなかったり、加害者側の保険会社も「医師の所見では麻痺があるのは認めるが、検査の結果異常なしで事故との因果関係が認められない。」と後遺障害慰謝料の支払いを渋ったりします。
このようなケースでは、交通事故の被害者が非常に不利な状況ですので、弁護士に示談交渉を依頼して、セカンドオピニオンとして交通事故の受傷に詳しい病院で再検査をしてもらうとよいでしょう。
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交通事故による脊髄損傷は、症状に応じて後遺障害等級が分かれる。慰謝料に大きく影響する部分であるため、具体的な症状と等級を照らし合わせ、把握するのが望ましい。
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄損傷が原因で引き起こされる痛みの中には、脊髄損傷独特のものもあるので、医師に相談の上治療をした方がいい。
脊髄損傷の後遺障害等級認定が非該当になるケースには、客観性の無さや一貫性の無さなどの傾向が見られる。非該当の場合にもポイントをおさえた対応によって賠償金増額の可能性はある。
脊髄の一部が傷つく不完全脊髄損傷は、重篤な障害があっても症状を軽くみられる事がある。交通事故の後遺障害等級認定は障害の重篤さで決まるため、正確に医師に後遺障害の状態を伝える必要がある。