死亡事故後のご遺体はいつ家族のもとへ?
突然の家族の死亡事故に、ご遺族の方は驚き悲しみ、ご遺体を引き取りとりあえず葬儀をしなければと考えられると思います。
しかし、交通事故による死亡の場合、病死などの自然死とは違い、手続きが増えたり違っていたりすることがあります。
病院などで医師に看取られながら死亡した場合には、死亡原因の所見を担当医師がするため特に問題はないのですが、病院や自宅療養で医師が付添っている時の死亡でなければ、すべて変死扱いとなります。
交通事故の場合は、病院に搬送時には生存していて、治療後の死亡となった場合には医師から死亡診断書が出されるので問題がないのですが、死亡事故で即死であったり搬送時に死亡したりしたケースでは、警察による検死が必要となる場合があります。
検死は即時行われることもありますが、検死が交通事故の翌日以降行われたり、遺体に不審な点があった際には司法解剖が追加して行われることもあり、ご遺体が家族の元に戻ってくるのは2日~1週間後と言う事もあります。
検死は拒否できる?出来ない?
死亡事故のご遺族の中には、「娘が交通事故で痛い思いをしたのに、死んでまでメスを入れられたくない。」などと言われる方もいます。
そのため、検死を行う際にはご遺族の方に了承を得てからすることが多いのですが、裁判所より「鑑定処分許可状」が発行されていれば職権で検死が出来るため、遺族と言えども検死を拒否することはできません。
それと、勘違いしやすいものの一つに、「検死は体をメスで切り刻む」という考えがあります。
テレビドラマなどの司法解剖のシーンのイメージが先行してしまっているせいかもしれませんが、交通事故で腹部の外傷性のショックやレントゲンで頸椎の致命的な骨折が映っているなど死亡原因が明らかである場合には、解剖は行われず目視による確認で済むことの方がほとんどです。
検死は被害者の最後の声
検死に携わる人の中には、「検死は死者の声なき最後の声を聴くもの」と言われる人が多くいます。
もちろん亡くなってしまうと声を上げることができず、死亡した時の状況等を伝えることが出来ません。
しかし、検死によって死亡事故の状況が分かることもあり、それこそ被害者が体を張ってあげた声なき最後の声であります。
ある死亡事故で、加害者の運転手が「被害者が赤信号にもかかわらず走って車道を横断しようとして、急ブレーキをかけたが間に合わなかった。」と証言をし、目撃者もおらず雨であったためブレーキ痕も残っていなかったので交通事故状況が分からなかったのですが、検死の結果この証言は嘘だと分かりました。
被害者のひざ下にバンパーの当たった打撲痕があったのですが、両足ともにほぼバンパーと同じ高さに平行に打撲があったからです。
人は走ると片足が大きく曲がり跳ね上がるため、両足が揃うことはほとんどないので、同じ高さに平行にアザがつくことはなく、しかも自動車が急ブレーキをかけたのであれば車体は前に沈むため、衝突時にはバンパーが平常時よりも2~10cmは位置が下がるはずだからです。
真実は、「歩行中の被害者が、わき見運転をしていた加害者にノーブレーキで衝突された」と言うもので、これは検死によって証明された事例です。
「死亡事故後のご遺体の引き取り」に関してのみんなの質問
死亡事故に遭い、搬送された病院で死亡が確認された場合、遺族は遺体の受け取りはどうすればよいのでしょうか?
また、なにか必要なものがあるのでしょうか?
交通事故による死亡事故の場合、現場から救急病院に搬送されるため、死亡事故の被害者の本人確認が遅れることがあります。
警察による本人確認ができているのであればよいのですが、それが済んでいない場合には死亡診断書の発行が出来ないことがあります。
そのため、警察からの指示があれば、本人及びご遺体引き取り予定の遺族の免許証や健康保健証などの身分証明証を持参した方が良いでしょう。
また、病院でご遺体を受け取る際には、通常、葬儀社の霊柩車で一旦葬儀会場に運ばれることが多いです。
この際、大きな病院であれば専属の葬儀社が取り仕切ることになりますが、生前から葬儀社を決めていた場合などは病院側に申し伝え、自身が決めた葬儀社に連絡する必要があります。
娘が交通事故で死亡したのですが、死亡事故から3日経っても警察から遺体を返していただけません。
私ども夫婦の希望は早く娘を返していただき、葬儀を執り行いたいと思っています。
警察に対して娘を早く返してもらえるように、抗議をすることはできるのでしょうか?
誰が見ても明らかな病死であっても、病院や医師が付添った場での死亡でない限り変死体として取り扱われ、警察の検視が必要となります。
そのため、交通死亡事故現場で、死亡が確認された場合には検視の対象となります。
現在、日本の変死体数は1年間で約17万人、そのうち正式な検死件数は1年間で約2万件になります。
実際のところ変死体を検分する監察医や医師が足りず、検視に時間がかかることがあります。
また、ひき逃げ死亡事故など悪質性の高いものでは、単なる検視ではなく司法解剖が行われることがあり、ご遺体の引き渡しが遅れることもあります。
ご遺族からすれば、待つ身で心痛が増されているかとは思いますが、警察には抗議ではなく進捗状況を聞くという形にされた方が良いと思います。
母がひき逃げによる死亡事故に遭い、警察での検視が終わり、明日遺体が戻ってきます。
通常の病院での病死ではないのですが、なにか特別にしなければいけない手続きなどはあるのでしょうか?
交通事故による死亡であっても、ご遺体を受け取られた後は通常の葬儀の手続きと変わりません。
そのため、葬儀社などに遺体の引き取りの手配をし、葬儀の準備をされると良いと思います。
葬儀社であれば、ご遺体の引き取り手続きなどもスムーズに行えると思いますので、早めに相談をした方が良いと思います。
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死亡事故の加害者は、事故発生後に逮捕される。最長23日間拘留され、その後、起訴するか不起訴か検察が判断する。加害者の減刑は、被害者との和解が重要視される。
死亡事故で発行される死亡診断書(死体検案書)は、のちのさまざまな手続きに必要となり、弁護士に依頼する際の情報源ともなるため、コピーを複数枚手元に置いておく方がよい。
死亡事故で歩行者の過失割合が大きい場合には、保険金の減額だけでなく、歩行者の遺族に莫大な損害賠償請求をされる可能性もある。
被害者が亡くなった死亡事故は、加害者の主張だけをきいていると正当な賠償金を受け取れない可能性があるので、実況見分調書を入手するなどして反論すべきである。
死亡事故に遭った被害者の遺族への対応によって、加害者の刑罰の軽重が変わる事があるので、弁護士に相談をして対応をどうするか考えた方が良い。